「日常生活自立支援事業と苦情解決」について学ぼう
福祉サービスを 利用するとき、 「手続きがよくわからない」 「お金の 管理が 不安」 「サービスへの不満を、 だれに伝えればよいかわからない」 と困ることがあります。
このページでは、 福祉サービスの 利用や 日常のお金の 管理などを 支える 「日常生活自立支援事業」 と、サービスへの不満や 困りごとを 伝え、 改善につなげる 「苦情解決」 について学びます。
成年後見制度との 違いや、 相談を 受ける 人・機関の 役割 を整理し、 本人の 権利を 守るしくみを 確認しましょう。
特に、 次の 内容について 確認しておきましょう。
- 日常生活自立支援事業の 目的と、 利用できる 人
- 受けられる 支援と、 相談窓口・ 支援する 人の 役割
- 成年後見制度との 違い
- 苦情の 相談先と、 審査請求との 違い
- 消費者被害の 相談先と、 クーリング・オフの 基本
- 本人の 意思や 個人情報を 守る、 介護福祉職の 対応
制度の 名前だけでなく、 「どのような困りごとか」 「どこに相談するか」 「どのような支援を 受けられるか」 に注目して、 一つずつ 整理していきましょう。
日常生活自立支援事業とは?
日常生活自立支援事業は、 判断能力が 不十分な 人が、 地域で 安心して 生活できるように 支援する 事業です。
本人との 契約に 基づいて、 福祉サービスの 利用や、 日常のお金の 管理など を手伝います。
どのような人が 利用できる?
利用するには、 次の 2つの条件 に当てはまることが 必要です。
① 判断能力が 不十分
認知症のある 高齢者、 知的障害や 精神障害のある 人などが 対象です。
福祉サービスの 利用などについて、 自分だけで 適切に 判断することが 難しい 人です。
② この事業の 契約内容を 理解できる
説明を 受けて、 どのような支援を 受ける 契約なのかを 理解し、 判断できる ことが必要です。
本人に 利用する 意思があることを 確認して、 契約します。
「判断能力が 不十分」でも、 すべてがわからないわけではありません
複雑な 手続きは 難しくても、 わかりやすい説明があれば、 この事業の 契約内容を 理解できる 人もいます。
病名だけで 決めず、 本人が 何を 理解できるかを 確認します。
本人と 相談して、 支援を 決める
本人が 困っていることや 希望を 確認し、 支援の 内容や 回数などを 決めます。 これを 支援計画 にまとめて、 契約します。
本人ができることを 大切にしながら、 必要な 部分を 支えます。
試験のポイント:
判断能力は 不十分でも、 この事業の 契約内容を 理解し、 判断できることが 必要です。
「判断能力が 不十分な 人なら、 だれでも利用できる」 という意味ではありません。
どのような支援を 受けられる?
日常生活自立支援事業では、 本人との 契約や 支援計画に 合わせて、 生活に 必要な 手続きなどを 支援します。 主な 支援を 見てみましょう。
① 福祉サービスの 利用援助
利用できる 福祉サービスを わかりやすく説明し、 本人が 選んだサービスを 利用するための 手続き を手伝います。
サービスを変更したいときや、 やめたいときの相談、 苦情解決制度を 利用するための 援助 も行います。
例: サービスへの不満を うまく伝えられないときに、 本人の 話を 整理し、 相談窓口に 伝えることを 手伝います。
② 日常的金銭管理
毎日の 生活に 必要なお金の 管理 を手伝います。 生活費の 預金の 出し入れや、 料金の 支払いなどを 支援します。
例: 福祉サービスの 利用料、 家賃、 電気・ガス・ 水道の 料金などを 支払う 手続きを 手伝います。
③ 書類等の 預かり
自分で 保管することに 不安がある 場合に、 通帳や 証書などの 大切な 書類 を預かります。
例: 年金証書、 預貯金通帳、 保険証書など。 預けられるものは、 相談窓口で 確認します。
お金を 管理することと、 お金を 給付することは 違います
日常的金銭管理は、 本人のお金を 使って、 必要な 支払いなどを 手伝う ことです。 この事業から 生活費が もらえるわけではありません。
試験のポイント:
日常生活の 範囲を 超えた 財産管理は、 この事業の 支援に 含まれません。
たとえば、 本人に 代わって 土地や 家を 売ることはできません。 必要に 応じて、 成年後見制度などの 利用を 検討します。
どこに相談し、 誰が支援する?
日常生活自立支援事業では、 社会福祉協議会が 中心となって支援します。 実施主体と 身近な相談窓口を 分けて確認しましょう。
実施主体
都道府県・ 指定都市の 社会福祉協議会です。 事業を行う 責任をもつ団体です。
身近な相談窓口
市町村の 社会福祉協議会などです。 住んでいる地域で 利用の相談ができます。
支援する人と審査会
① 専門員
相談を受け、 本人の生活や 希望を確認します。 支援計画の作成、 契約の手続き、 生活支援員への助言 などを行います。
② 生活支援員
契約や支援計画に 沿って、具体的な 支援をします。 定期的に訪問し、 支払いなどを手伝います。
③ 契約締結審査会
本人がこの事業の 契約を結べるかなど、 判断が難しいときに、 契約内容や 本人の判断能力について 審査・助言をします。
「締結」は、 契約を結ぶことです。 すべての利用者が 必ずこの審査会の 審査を受けるわけではありません。
相談から利用までの流れ
① 相談
困っていることを社会福祉協議会に
伝えます。
② 状況の確認
生活や希望、
契約内容を判断できるかを
確認します。
③ 支援計画・契約
本人と相談して
支援内容や回数を
決め、契約します。
④ 支援の開始・見直し
計画に沿って支援し、
本人の状況に
合わせて定期的に
見直します。
利用料も確認しよう
契約前の相談などは 無料です。 契約後の支援は 原則として有料で、 金額は実施主体が 決めます。
生活保護受給世帯の 利用料は無料です。 ただし、書類の預かりでは、 貸金庫の費用などが 別にかかる場合があります。
試験のポイント:
実施主体・相談窓口・ 専門員・生活支援員・ 契約締結審査会の 役割を分けて 覚えましょう。
成年後見制度と比べよう
「毎月の支払いを 手伝ってほしい」と、 「本人に代わって 不動産の売却などを 行う必要がある」では、 必要な支援が 違います。
ここでは、成年後見制度のうち 法定後見制度と比べます。
※スマートフォンでは表を 左右に動かせます。
| 項目 | 日常生活自立支援事業 | 法定後見制度 |
|---|---|---|
| 対象者 | 判断能力が不十分でも、 この事業の契約内容を 判断できる人。 | 判断能力が不十分な 人。 判断能力の程度などに 応じて支援する。 |
| 開始方法 | 本人が社会福祉協議会と 契約する。 | 家庭裁判所への 申立てと審判により 始まる。 |
| 支援内容 | 福祉サービスの利用援助、 日常的金銭管理、 書類などの預かり。 | 財産管理・身上保護に 関する法律行為。 権限の範囲内で行う。 |
| 関係機関 | 社会福祉協議会、 契約締結審査会、 運営適正化委員会など。 | 家庭裁判所が 成年後見人等を 選び、監督する。 |
用語も確認しよう
申立ては、 裁判所に判断や 手続きを求めることです。 審判は、 家庭裁判所が判断を 示すことです。
介護サービスを利用する 契約など、 本人の生活や 療養を支える 法律行為は、 身上保護に含まれます。
入院・入所したら利用できない?
日常生活自立支援事業は、 入院中や 施設への入所中でも、 対象となる場合があります。 住んでいる場所だけでなく、 本人の状況や 必要な支援を確認します。
試験のポイント:
日常生活自立支援事業の 支援者に、 成年後見制度のような 取消権は与えられません。 取消権とは、 一定の条件のもとで 契約などを取り消す 権限です。
なお、任意後見人にも 取消権はありません。 法定後見と任意後見を 区別しましょう。
サービスへの苦情は、どこに伝える?
「職員の説明がわからない」 「希望を聞いてもらえない」など、 不満や困りごとは 相談できます。 苦情解決は、 利用者の権利を 守り、サービスをよりよくするためのしくみです。
事業所の苦情解決の体制
① 苦情受付担当者
苦情を受け付け、 内容や本人の 希望を確認・ 記録・報告します。
② 苦情解決責任者
施設長などが担当し、 話し合いによる 解決や改善を 進めます。
③ 第三者委員
中立・公正な 立場で、 助言や話し合いへの 立ち会いをします。 利用者は直接 苦情を伝えることもできます。
事業所の外の相談先
市町村の窓口
福祉や介護保険の 身近な相談先です。 内容に応じて 対応し、関係機関につなぎます。
国民健康保険団体連合会(国保連)
介護保険サービスの苦情を 受け付けます。 サービスの質に関する 調査や、 事業者への指導・ 助言を行います。
運営適正化委員会
都道府県の 社会福祉協議会に 設置されています。 福祉サービスの苦情について、 相談・助言・ 調査・あっせんなどを行います。
また、日常生活自立支援事業が 適切に運営されているかを 確認します。
あっせんとは、利用者と事業者の 間に入り、 話し合いによる解決を 手伝うことです。
必ず順番に相談するわけではない
事業所に言いにくいときなどは、 運営適正化委員会へ 直接相談することもできます。 苦情の内容と 本人の希望に 合わせて相談先を考えます。
試験のポイント:
第三者委員は 事業者が整える体制、 運営適正化委員会は 都道府県の社会福祉協議会に 設置される機関です。 名前を混同しないようにしましょう。
苦情と審査請求の違いを知ろう
「何に納得できないのか」によって、 使うしくみが違います。
サービスへの苦情
「職員の対応に困っている」 「サービスの説明が足りない」 という場合です。
事業所や市町村、 国保連などに相談し、 改善を求めます。
行政の決定への審査請求
「要介護認定の結果に納得できない」 など、介護保険に関する 行政処分への不服です。
都道府県の 介護保険審査会に 審査請求をします。
審査請求とは?
行政が行った 決定などに不服があるときに、 その決定が法律に 合っているか、不当ではないかを 審査してもらう手続きです。
要介護認定のほか、 介護保険料の徴収なども 対象になります。
試験のポイント:
介護認定審査会は 要介護認定の審査・ 判定、 介護保険審査会は 行政処分への不服を 審査します。
介護保険審査会が 自分たちで要介護度を 決め直すわけではありません。 処分が取り消されたときは、 市町村が改めて判断します。
消費者被害から生活を守ろう
「訪問販売で高い 商品を買ってしまった」 「よくわからないまま投資の契約を 勧められている」など、 買い物や契約の トラブルにも注意します。
相談先は消費生活センターなど
消費生活センターなどで、 商品やサービスの契約に 関する相談ができます。
相談先がわからないときは、 消費者ホットライン「188」で、 近くの相談窓口の 案内を受けられます。
クーリング・オフの基本
訪問販売などで 契約したあと、 一定の期間内であれば、 申し込みを撤回したり、 契約を解除したりできるしくみです。
訪問販売や電話勧誘販売では、 原則として、 法律で決められた 書面を受け取った 日を含めて8日以内です。
すべての契約に使えるわけではありません。 通信販売には、 法律上のクーリング・オフの制度はありません。 契約の種類や 条件を相談窓口で 確認します。
介護福祉職ができること
本人を責めずに話を 聞き、 契約書や領収書、 勧誘の内容などを 確認します。
本人の意向を確認し、 上司などに報告して、 早めに専門の 相談窓口につなぎます。
試験のポイント:
商品の購入や 勧誘・契約のトラブルは、 消費生活センターなどにつなぎます。 介護福祉職だけで 「解約できる・できない」と決めつけないことが 大切です。
毎日の介護で権利を守ろう
権利擁護は、 制度を利用するときだけのものではありません。 毎日の声かけや 対応も、 本人の権利を守ることにつながります。
① 本人の話を聞く
どうしたいか、何に困っているかを 本人に確認します。 家族や職員の 考えだけで決めません。
② 説明して、確認する
短い言葉や図などを 使い、本人が 理解できるように説明します。 説明しただけで終わらず、 理解や意向を確認します。
③ プライバシー・個人情報を守る
排泄や着替えの場面では、 カーテンやドアを閉めるなどの配慮をします。
病気や生活の情報を、 関係のない人に 話したり、SNSに載せたりしません。
④ 苦情を記録・報告する
話を丁寧に聞き、 起きたことと、本人の 希望を記録します。 一人で抱えず、 担当者や責任者に 報告します。
話し合いの結果や 改善したことも記録し、 本人に伝えます。
虐待・身体拘束も確認しよう
虐待が疑われるときは、 安全を確保し、 必要な通報・ 相談につなぎます。 詳しくは関連ページで学びましょう。
試験のポイント:
本人の意思を 確認し、理解できるように 説明することが基本です。 苦情を伝えたことを 理由に、不利益な 扱いをしてはいけません。
試験ではここを確認しよう
制度の名前だけでなく、 「だれが」「どのような支援を」「どこで」 受けるのかを整理しましょう。
① 利用できる人
日常生活自立支援事業では、 判断能力が不十分でも、 この事業の契約内容を 判断できることが必要です。
② 支援内容
福祉サービスの利用援助・ 日常的金銭管理・ 書類などの預かりを 確認します。 土地や家の売却などとは 区別します。
③ 担当者
専門員は支援計画の 作成など、 生活支援員は計画に 沿った支援をします。 契約締結審査会の役割も 確認します。
④ 苦情の窓口
事業所の担当者、 第三者委員、 市町村、 国保連、 運営適正化委員会の 役割と設置先を 整理します。
⑤ 審査請求
要介護認定などの行政処分への 不服は、 都道府県の 介護保険審査会への 審査請求です。
試験のポイント:
事例では、 「支払いの支援」 「サービスへの苦情」 「行政の決定への不服」 「契約のトラブル」の どれに当たるかを考えましょう。
試験でよく間違えるポイント
○か×かを考えてから、 答えを開きましょう。
日常生活自立支援事業は、 判断能力が不十分であれば、 契約内容を理解できなくても 本人だけで契約できる。
○ それとも × ?
答えと解説を見る
×
この事業の契約内容を 判断できることが必要です。 「判断能力が不十分」と 「契約内容を理解できない」は 同じではありません。
生活支援員は、 契約や支援計画に 沿って、日常的な 支払いなどを支援する。
○ それとも × ?
答えと解説を見る
○
生活支援員は 計画に沿った 具体的な支援をします。 専門員は支援計画の 作成などを担当します。
運営適正化委員会は、 市町村の社会福祉協議会に 設置される。
○ それとも × ?
答えと解説を見る
×
設置先は 都道府県の 社会福祉協議会です。 日常生活自立支援事業の 身近な相談窓口と 混同しないようにしましょう。
要介護認定の結果に 不服があるときは、 都道府県の介護保険審査会に 審査請求できる。
○ それとも × ?
答えと解説を見る
○
要介護認定などの 行政処分への不服を 審査します。 職員の対応など、 サービスへの苦情とは区別します。
高額な商品の 訪問販売で困っているときは、 消費生活センターなどに相談できる。
○ それとも × ?
答えと解説を見る
○
購入や契約のトラブルを 相談できます。 介護福祉職は本人の 話を聞き、 早めに相談につなぎます。
まとめ
日常生活自立支援事業と 苦情解決について、 大切なポイントを確認しましょう。
-
日常生活自立支援事業は、 本人との契約に 基づきます。 この事業の契約内容を 判断できることが必要です。
-
主な支援は、 福祉サービスの利用援助、 日常的金銭管理、 書類などの預かりです。
-
実施主体は 都道府県・指定都市の 社会福祉協議会です。 身近な相談窓口は 市町村の社会福祉協議会などです。
-
苦情解決は、 利用者の権利を 守り、サービスの質を 高めるためのしくみです。
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運営適正化委員会は、 都道府県の社会福祉協議会に 設置されています。 苦情解決と 日常生活自立支援事業の 適正な運営にかかわります。
-
介護保険サービスの苦情は 市町村や国保連にも 相談できます。 要介護認定などへの審査請求は 介護保険審査会です。
-
購入や契約のトラブルは、 消費生活センターなどにつなぎます。 相談先がわからないときは「188」です。
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毎日の介護では、 本人の意思・ プライバシー・個人情報を 大切にします。 苦情は記録・ 報告して改善につなげます。
試験のポイント:
事例を読むときは、 「本人は何に 困っているか」 「どの制度・窓口が 対応するか」を考えましょう。
制度の対象者、 支援内容、 担当者、 相談先を 一緒に確認しておきましょう。
実際の過去問に挑戦しよう
学んだ内容が、 試験でどのように問われるかを 確認しましょう。
制度と相談先を選べるかな?
日常生活自立支援事業や 苦情解決に関する 過去問で、 理解を確かめましょう。
成年後見制度も復習しよう
制度の違いが 難しかったときは、 ページ①に戻って確認しましょう。
