障害の理解
問題49
次のうち,ノーマライゼーション(normalization)の原理を盛り込んだ法律(いわゆる「1959年法」)を制定した最初の国として,正しいものを1つ選びなさい。
1 デンマーク
2 イギリス
3 アメリカ
4 スウェーデン
5 ノルウェー
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題49(解答と解説)
ノーマライゼーションに関する問題です。
答えは、「1」です。
今回の問題では、法律に初めて明記された国が問われています。
ノーマライゼーションとは、障害のある人たちを一人の市民として地域で普通に生活できるように社会のしくみを変えていくことです。
世界で初めてノーマライゼーションの考えを発表したのは、デンマークのバンクミケルソンという人です。
バンクミケルセンは、知的障害者の親の会の運動にかかわる中で、そのスローガンが法律に加わるように力を尽くし、1959年にデンマークで知的障害者福祉法が成立しました。
よって、答えは選択肢「1」となります。
問題50
法定後見制度において,成年後見人等を選任する機関等として,正しいものを1つ選びなさい。
1 法務局
2 家庭裁判所
3 都道府県知事
4 市町村長
5 福祉事務所
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題50(解答と解説)
法定後見制度に関する問題です。
答えは、「2」です。
法定後見制度は、判断能力が十分でない人を法的に保護するための制度です。
主に高齢者や認知症、精神障害などで判断能力が低下した人が対象です。
自分に不利益な契約をわからないまま結んでしまわないように、本人の意思を尊重した支援を行いながら、法的に保護します。
この制度では、家庭裁判所が成年後見人や保佐人、補助人を選び、本人の財産管理や日常生活を支援します。
法定後見制度には、次の3つの種類があります。
法定後見制度
1.後見
判断能力がほとんどない人が対象です。成年後見人が本人の財産管理や契約など、全ての法律行為を代わりに行います。
2.補佐
判断能力が著しく不十分な人が対象です。保佐人が、本人が行う契約や重要な法律行為について助言し、同意を与える役割を果たします。
3.補助
判断能力が一部不足している人が対象です。補助人は、本人が特定の法律行為を行う際にサポートをします。補助の範囲は本人の状態に合わせて設定されます。
1 法務局
【×】誤りです。法律や登記に関する業務を担当する行政機関です。土地や建物の登記、会社設立の手続き、戸籍の管理などを行います。
2 家庭裁判所
【○】正しい選択肢です。家庭裁判所は、法定後見制度における成年後見人等を選任するほか、家族や子どもに関する問題を扱う機関です。離婚や養育、相続、少年事件などを解決するための手続きを行います。
3 都道府県知事
4 市町村長
【×】誤りです。市町村長は、申立て人になることができます。成年後見制度の利用状況として、申立て人の24%(一番多い)が市区町村長となっています。
5 福祉事務所
【×】誤りです。福祉事務所は、社会福祉法に基づき、援護、育成又は更生の措置に関する事務を担当する第一線の社会福祉行政機関です。
#法定後見制度 #家庭裁判所
問題51
次の記述のうち,障害を受容した心理的段階にみられる言動として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 障害があるという自覚がない。
2 周囲に不満をぶつける。
3 自分が悪いと悲観する。
4 価値観が転換し始める。
5 できることに目を向けて行動する。
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問題51(解答と解説)
障害受容の過程とその心理過程に関する問題です。
答えは、「5」です。
障害受容の過程とその心理過程は次の5つの過程で整理をされます。
今回の問題にある「障害を受容した」段階とは、障害を自分の一部として受け入れた適応期のことです。
選択肢がそれぞれどの段階にあるか見ていきましょう。
1 障害があるという自覚がない。
【×】誤りです。ショック期の段階です。
2 周囲に不満をぶつける。
【×】誤りです。混乱と苦悩の時期の段階です。
3 自分が悪いと悲観する。
【×】誤りです。混乱と苦悩の時期の段階です。
4 価値観が転換し始める。
【×】誤りです。適応への努力期の段階です。
5 できることに目を向けて行動する。
#障害受容 #心理的過程
問題52
統合失調症(schizophrenia)の特徴的な症状として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 振戦せん妄
2 妄想
3 強迫性障害
4 抑うつ気分
5 健忘
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問題52(解答と解説)
統合失調症の特徴的な症状に関する問題です。
答えは、「2」です。
統合失調症は、現実と想像の区別が難しくなる精神疾患です。主な症状には、幻覚や妄想、混乱した考えや言動があります。
1 振戦せん妄
【×】誤りです。振戦せん妄とは、手や体が震えて、不安や混乱、幻覚などが現れることです。アルコール依存症の人が急に飲酒をやめたときに起こる症状です。
2 妄想
【○】正しい選択肢です。妄想は、現実とは違うことを本当だと信じ込むことです。統合失調症や認知症の人にみられる症状です。
3 強迫性障害
【×】誤りです。強迫性障害は、強い不安を消すために、繰り返し同じ行動を繰り返す病気です。何度も手を洗ってしまう、鍵がしっかりかかっているか何度も確認してしまうなどです。
4 抑うつ気分
【×】誤りです。抑うつ気分は、長期間にわたって気分が落ち込み、興味や喜びを感じにくくなる状態です。うつ病の人に見られる症状です。
5 健忘
【×】誤りです。健忘は、記憶の一部または全部を思い出せなくなる状態です。ストレスや脳の損傷、老化などで見られる症状です。
問題53
Bさん(60歳,男性)は,一人暮らしをしている。糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)による視覚障害(身体障害者手帳1級)があり, 末梢神経障害の症状がでている。Bさんの日常生活において,介護福祉職が留意すべき点として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 水晶体の白濁
2 口腔粘膜や外陰部の潰瘍
3 振戦や筋固縮
4 足先の傷や壊疽などの病変
5 感音性の難聴
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問題53(解答と解説)
糖尿病性網膜症に関する問題です。
答えは、「4」です。
糖尿病性網膜症は、糖尿病による高血糖が長期間続くことで、目の網膜にある血管が傷つき、視力が低下する病気です。
初期には症状が現れないことが多いですが、進行すると視力がぼやけたり、視野の欠損が生じ、最悪の場合、失明することもあります。
次に、Bさんに出ている「末梢神経障害」について、確認しましょう。
末梢神経障害は、手足にある末梢神経が損傷することで起こる病気です。
主な原因は糖尿病や外傷、感染症、薬物の副作用などです。
症状には、手足のしびれや痛み、筋力の低下、感覚の鈍さがあり、症状が進行すると、日常生活に支障をきたすことがあります。
1 水晶体の白濁
【×】誤りです。糖尿病性網膜症は、目の網膜が傷つくため、水晶体の白濁は直接関係がありません。
2 口腔粘膜や外陰部の潰瘍
【×】誤りです。「潰瘍」とは、皮膚の表面が傷ついてへこんだ状態です。口腔粘膜や外陰部の潰瘍は直接関係はありません。
3 振戦や筋固縮
【×】誤りです。振戦や筋固縮は糖尿病とは関係ありません。
4 足先の傷や壊疽などの病変
【○】正しい選択肢です。壊疽とは血液の流れが悪くなって、体の一部が黒くなり、死んでしまう状態のことです。
Bさんは末梢神経障害の症状が出ていますので、足先の傷や壊疽などの病変を介護福祉職として注意していく必要があります。
5 感音性の難聴
【×】誤りです。感応性難聴は、耳の中や神経に問題があって、音が聞こえにくくなる病気です。音は聞こえても、音の聞き分けが難しく、言葉がわかりにくいことがあります。
今回の問題では、気をつける点ではありません。
#糖尿病性網膜症 #末梢神経障害
問題54
Cさん(55歳,男性)は, 5年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と診断された。現在は症状が進行して,日常生活動作に介護が必要で,自宅では電動車いすと特殊寝台を使用している。
次の記述のうち,Cさんの現在の状態として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 誤嚥せずに食事することが可能である。
2 明瞭に話すことができる。
3 身体の痛みがわかる。
4 自力で痰を排出できる。
5 箸を上手に使える。
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問題54(解答と解説)
筋萎縮性側索硬化症に関する問題です。
答えは、「3」です。
筋萎縮性側索硬化症は、主に60~70歳代に発症し、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がやせて、力がなくなっていく病気です。
筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)が障害を受け、脳からの命令が伝わらなくなってしまいます。
指定難病です。
筋萎縮性側索硬化症には、現れやすい症状と現れにくい症状があります。
試験でも聞かれやすいポイントなので、整理して覚えましょう。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
現れやすい症状
四肢の運動障害、球麻痺(構音障害、嚥下障害)、呼吸障害など
現れにくい症状
知的障害、感覚障害、膀胱直腸障害、眼球運動、褥瘡
1 誤嚥せずに食事することが可能である。
【×】誤りです。日常生活動作に介護が必要とありますが、食事については書かれていません。
2 明瞭に話すことができる。
【×】誤りです。日常生活動作に介護が必要とありますが、会話については書かれていません。
3 身体の痛みがわかる。
【○】正しい選択肢です。身体の痛みは感覚です。感覚障害は現れにくい症状の1つなので、痛みはわかると判断できます。
4 自力で痰を排出できる。
【×】誤りです。日常生活動作に介護が必要とありますが、痰の排出については書かれていません。
5 箸を上手に使える。
【×】誤りです。日常生活動作に介護が必要とありますが、食事の介助の具体的な内容については書かれていません。
#筋萎縮性側索硬化症
問題55
Dさん(36歳,女性,療育手帳所持)は,一人暮らしをしながら地域の作業所に通っている。身の回りのことはほとんど自分でできるが,お金の計算,特に計画的にお金を使うのが苦手だった。そこで,社会福祉協議会の生活支援員と一緒に銀行へ行って, 1週間ごとにお金をおろして生活するようになった。小遣い帳に記録をするようにアドバイスを受けて,お金を計画的に使うことができるようになった。
次のうち,Dさんが活用した支援を実施する事業として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 障害者相談支援事業
2 自立生活援助事業
3 日常生活自立支援事業
4 成年後見制度利用支援事業
5 日常生活用具給付等事業
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題55(解答と解説)
利用しているサービスを選ぶ問題です。
答えは、「3」です。
1 障害者相談支援事業
【×】誤りです。障害者相談支援事業は、障害者総合支援法に基づくサービスで、障害を持つ人やその家族が自立した日常生活や社会生活を送れるように、相談援助する事業です。
2 自立生活援助事業
【×】誤りです。自立生活援助事業は、障害者総合支援法に基づくサービスで、障害者支援施設などを退所した人を対象に、定期的な訪問や随時の対応により、自立した生活の実現に必要な支援を行う事業です。
3 日常生活自立支援事業
【○】正しい選択肢です。日常生活自立支援事業は、社会福祉法に基づくサービスで、認知症高齢者など判断能力が不十分な人が、福祉サービスの利用援助や日常生活金銭管理などの日常生活の支援をする事業です。都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施主体です。
Dさんが活用しているのは、この事業です。
4 成年後見制度利用支援事業
【×】誤りです。成年後見制度利用支援事業は、成年後見制度を利用する場合に、成年後見人等に報酬を負担するのが難しい人に対して費用を助成する事業です。
5 日常生活用具給付等事業
【×】誤りです。日常生活用具給付等事業は、障害者総合支援法に基づくサービスで、障害を持つ人が日常生活をよりよくに過ごせるように、必要な用具を給付・貸与することを目的とした事業です。
#自立生活援助事業 #社会福祉協議会
問題56
次のうち,障害の特性に応じた休憩時間の調整など,柔軟に対応することで障害者の権利を確保する考え方を示すものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 全人間的復権
2 合理的配慮
3 自立生活運動
4 意思決定支援
5 共同生活援助
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題56(解答と解説)
問題文に関する用語を選ぶ問題です。
答えは、「2」です。
1 全人間的復権
【×】誤りです。全人間的復権は、障害のある人が身体的、精神的、社会的、職業的に能力を発揮し、人間らしく生きる権利を示します。リハビリテーションの目的でもあります。
2 合理的配慮
【○】正しい選択肢です。合理的配慮とは、障害があることによって生じる困りごとの解消や軽減に向けて、社会全体で必要な対応をしていこうという考え方のことです。障害者差別解消法には、障害者の性別、年齢および障害の状態に応じて、事業者は合理的配慮をしなければならないと義務づけられています。
3 自立生活運動
【×】誤りです。自立生活運動(IL運動)は、1970年代にアメリカのカリフォルニア州で展開された運動です。障害者自身の選択による自己決定の尊重を主張した運動です。
4 意思決定支援
【×】誤りです。意思決定支援は、意思決定が難しい人が、日常生活などで自分の意思で生活することができるように、その人のことを支援することです。
5 共同生活援助
【×】誤りです。共同生活援助とは、障害者総合支援法に基づき、共同生活を営む住居において、日常生活や社会生活上の支援を行うサービスです。
問題57
「障害者総合支援法」において,障害福祉サービスを利用する人の意向のもとにサービス等利用計画案を作成する事業所に置かなければならない専門職として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護支援専門員(ケアマネジャー)
2 社会福祉士
3 介護福祉士
4 民生委員
5 相談支援専門員
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題57(解答と解説)
専門職の必置機関に関する問題です。
答えは、「5」です。
問題文にある「障害福祉サービスを利用する人の意向のもとにサービス等利用計画案を作成する事業所」とは、指定特定相談支援事業所のことです。
専門職には、その専門職の人がいなければいけないと決められている機関があります。
1 介護支援専門員(ケアマネジャー)
【×】誤りです。介護支援専門員が必置となっている機関は、居宅介護支援事業所、介護保険施設、地域包括支援センターです。地域包括支援センターは主任介護支援専門員となっています。
2 社会福祉士
【×】誤りです。社会福祉士が必置となっている機関は、地域包括支援センターです。
3 介護福祉士
【×】誤りです。介護福祉士が必置となっている機関は、特にありません。
4 民生委員
【×】誤りです。民生委員が必置となっている機関は、特にありません。
5 相談支援専門員
【○】正しい選択肢です。相談支援専門員は、指定一般相談支援事業所、指定特定相談支援事業所などに配置されることが必須となっています。
#相談支援専門員 #サービス等利用計画
問題58
家族の介護力をアセスメントするときの視点に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 障害者個人のニーズを重視する。
2 家族のニーズを重視する。
3 家族構成員の主観の共通部分を重視する。
4 家族を構成する個人と家族全体の生活を見る。
5 支援者の視点や価値観を基準にする。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題58(解答と解説)
アセスメントの視点に関する問題です。
答えは、「4」です。
アセスメントとは、課題分析のことをいいます。
アセスメントをするときに大切なのは、全体像をとらえること、主観的情報と客観的情報のそれぞれから整理することです。
この問題では、「家族の介護力」の課題を明確にし、分析するという視点で選択肢を見ていきます。
1 障害者個人のニーズを重視する。
【×】誤りです。アセスメントは何か1つを重視するのではなく、全体像をとらえることが大切です。適した選択肢ではありません。
2 家族のニーズを重視する。
【×】誤りです。選択肢1と同じです。
3 家族構成員の主観の共通部分を重視する。
【×】誤りです。選択肢1と同じです。
4 家族を構成する個人と家族全体の生活を見る。
【○】正しい選択肢です。家族個人と家族全体の生活をそれぞれから見ることはアセスメントをするのに大切な視点です。
5 支援者の視点や価値観を基準にする。
【×】誤りです。支援者の視点が基準になることはありません。