「介護福祉士」の資格は、介護に関する一定の知識や技能があることを証明する国家資格です。
では、「介護福祉士」という資格が、どの法律に、どのように位置づけられているのか確認をしていきましょう。
「介護福祉士」とは
介護福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」を根拠とする介護に関する日本で唯一の国家資格です。
「介護福祉士法」と聞くこともあるかもしれませんが、正確には「社会福祉士及び介護福祉士法」という法律の名前です。
この法律では、社会福祉士と介護福祉士の資格に関することが記載されています。
介護福祉士が誕生したのは、1987年(昭和62年)
「社会福祉士及び介護福祉士法」が成立したのは、1987年です。
そのあと、2007年(平成19年)、2011年(平成23年)に一部が改正されています。
介護福祉士の定義
まずは、「介護福祉士」の定義を確認しましょう。
「定義」とは、「人々の間で共通で理解できるように言葉で説明するもの」です。
(定義)
第二条 この法律において「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82021000&dataType=0&pageNo=1
第四十二条第一項
介護福祉士となる資格を有する者が介護福祉士となるには、介護福祉士登録簿に、氏名、生年月日その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。
うわ~むずかしい…
法律の言葉は、難しいよね。簡単に説明するね。
介護福祉士の定義のポイントは、3つです。
- 介護福祉士は、介護福祉士登録簿に登録をしないと、介護福祉士になれません。
- 介護福祉士は、名称独占の資格です。(資格を持っている人だけが、名称を名乗ることができます)
- 業務の内容は、心身の状況に応じた介護と介護に関する指導です。
介護福祉士になれない人はどんな人?(欠格事由)
次に、「欠格事由」について、見ていきます。
欠格とは、法律において求められている資格に欠けているという意味で、欠格事由は、その事柄(内容)のことです。
つまり、介護福祉士になれない人の内容のことです。
(欠格事由)
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、社会福祉士又は介護福祉士となることができない。
一 心身の故障により社会福祉士又は介護福祉士の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
三 この法律の規定その他社会福祉又は保健医療に関する法律の規定であつて政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
四 第三十二条第一項第二号又は第二項(これらの規定を第四十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
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簡単に説明するよ。
- 心身の故障で介護福祉士の業務を適正にできない人
- 禁錮以上の刑(この法律で罰金の刑)を受け、執行から2年経たない人
- 介護福祉士の登録を取り消されてから、2年経たない人
このような人は介護福祉士になれません。
また、介護福祉士の資格を取った後でも、取り消されてしまいます。
注意しましょうね。
介護福祉士の義務と罰則について確認しよう
「社会福祉士及び介護福祉士法」の第4章、第5章には、介護福祉士の義務や罰則について書かれています。
「義務」とは、「その人がそれぞれの立場に応じてしなければならないこと」です。
つまり、介護福祉士である以上は、介護福祉士として必ずしなければならないことになります。
義務と罰則は、一緒に覚えると効率的だよ。
- 誠実義務(第44条の2)
- 信用失墜行為の禁止(第45条)
- 秘密保持義務(第46条)
- 連携(第47条)
- 資質向上の責務(第47条の2)
- 名称使用の制限(第48条)
誠実義務(第44条の2)
(誠実義務)
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第四十四条の二 社会福祉士及び介護福祉士は、その担当する者が個人の尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、常にその者の立場に立つて、誠実にその業務を行わなければならない。
介護福祉士は、利用者個人が持っている人間性を変えることなく大切にし(尊厳を保持する)、自立した日常生活が送れるように誠実に業務を行わなければならないということです。
常に利用者の立場に立って業務を行うということも大切です。
信用失墜行為の禁止(第45条)
(信用失墜行為の禁止)
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第四十五条 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
介護福祉士は、常に介護福祉士の信用を傷つけるようなことはしてはいけないということです。
- 介護福祉士登録の取り消し、または期間を定めて介護福祉士の名称使用制限
秘密保持義務(第46条)
(秘密保持義務)
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第四十六条 社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。
介護福祉士は、どんな理由があっても、業務で知った秘密を他の人に漏らしてはいけないということです。
この義務については、介護福祉士で働いているときだけでなく、仕事を辞めた後もずっと続きます。
- 1年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 期間を定めて介護福祉士の名称使用制限
連携(第47条)
(連携)
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第四十七条
2 介護福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、認知症(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第五条の二第一項に規定する認知症をいう。)であること等の心身の状況その他の状況に応じて、福祉サービス等が総合的かつ適切に提供されるよう、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。
介護福祉士は、認知症など利用者の心身の状況に応じて、福祉サービスを提供する関係者と連携しなければならないということです。
「多職種連携」という言葉を聞いたことはありませんか?
他の職種の人との連携は介護福祉士にとって、とても大切なことです。
資質向上の責務(第47条の2)
(資質向上の責務)
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第四十七条の二 社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助又は介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
介護福祉士は、資格を取ったあとも、環境や状況の変化に対応するため、常に知識や技能が向上するようにしなければならないということです。
名称使用の制限(第48条)
(名称の使用制限)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82021000&dataType=0&pageNo=1
第四十八条
2 介護福祉士でない者は、介護福祉士という名称を使用してはならない。
この文はわかりやすいですね。
介護福祉士の資格を取得していない人は、介護福祉士という名前を名乗ってはいけないということです。
- 30万円以下の罰金
介護福祉士が行える一部「医療的ケア」について
「社会福祉士及び介護福祉士法」は、2007年(平成19年)、2011年(平成23年)に一部が改正されています。
その中でも、2011年の改正で、それまで介護福祉士はできなかった喀痰吸引や経管栄養などを一定の研修を受けた人に限り医師の指示の下で行えるようになりました。
これについては、また別のページで詳しく説明します。