発達と老化の理解
問題31
スキャモン(Scammon, R.E.)の発達曲線に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 神経系の組織は,4歳ごろから急速に発達する。
2 筋骨格系の組織は,4歳ごろから急速に発達する。
3 生殖器系の組織は,12歳ごろから急速に発達する。
4 循環器系の組織は,20歳ごろから急速に発達する。
5 リンパ系の組織は,20歳ごろから急速に発達する。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題31(解答と解説)
スキャモン(Scammon, R.E.)の発達曲線に関する問題です。
答えは、「3」です。
スキャモンはアメリカの医学者・人類学者で、ヒトの身体がどのように発達するか、誕生から成人までの発育量を100%とした割合で、4つのパターンに分けて発達の様子をグラフで表しました。
スキャモンの発達曲線
1.リンパ型:
リンパ系、免疫系組織は、幼児期から急激に成長し、10〜12歳でピークに達した後、成人期にかけて減少します。
2.神経型:
脳、脊髄、視覚などの神経系、感覚器系は、幼少期に急速に成長し、6〜7歳でほぼ完成します。その後、緩やかに成長します。
3.一般型:
身体全体の成長は、幼少期から思春期までに急激に成長し、成人まで継続します。
4.生殖型:
生殖器は、思春期から急激に成長し、性成熟に伴って発達します。
1 神経系の組織は,4歳ごろから急速に発達する。
【×】誤りです。神経系の組織は、6歳ごろには9割まで発達してしまいます。
2 筋骨格系の組織は,4歳ごろから急速に発達する。
【×】誤りです。筋骨格系の組織は、一般型に分類されます。幼少期から思春期までに急激に成長します。
3 生殖器系の組織は,12歳ごろから急速に発達する。
【○】正しい選択肢です。思春期ごろから急激に成長します。
4 循環器系の組織は,20歳ごろから急速に発達する。
【×】誤りです。循環器系の組織は、一般型に分類されます。幼少期から思春期までに急激に成長します。
5 リンパ系の組織は,20歳ごろから急速に発達する。
【×】誤りです。幼児期から急激に成長し、10〜12歳でピークに達します。
問題32
幼稚園児のJさん(6歳,男性)には, 広汎性発達障害(pervasive developmental disorder)がある。砂場で砂だんごを作り,きれいに並べることが好きで,毎日,一人で砂だんごを作り続けている。
ある日,園児が帰宅した後に,担任が台風に備えて砂場に青いシートをかけておいた。翌朝,登園したJさんが,いつものように砂場に行くと,青いシートがかかっていた。Jさんはパニックになり,その場で泣き続け,なかなか落ち着くことができなかった。
担任は,Jさんにどのように対応すればよかったのか,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 前日に,「あしたは,台風が来るよ」と伝える。
2 前日に,「あしたは,台風が来るので砂場は使えないよ」と伝える。
3 前日に,「あしたは,おだんご屋さんは閉店です」と伝える。
4 その場で,「今日は,砂場は使えないよ」と伝える。
5 その場で,「今日は,おだんご屋さんは閉店です」と伝える。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題32(解答と解説)
広汎性発達障害の園児への対応に関する問題です。
答えは、「2」です。
広汎性発達障害は、行動や物事に強いこだわりがあり、コミュニケーションや社会的な関わりに困難を感じる発達障害です。
自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群が含まれます。
原因は、先天的な脳の機能障害です。
今回の事例でポイントになるのは、次の部分です。
行動や物事に強いこだわりがある広汎性発達障害のJさんにとって、変更がある場合は、できるだけ事前にわかりやすく伝えることが大切です。
「台風に備えて」という部分から、前日には台風が来ることがわかっていたことがわかります。
それであれば、Jさんにも前日に翌日の変更点を伝えることで、パニックを軽くすることができます。
1 前日に,「あしたは,台風が来るよ」と伝える。
【×】誤りです。「台風が来る」だけでは、情報として足りないので、適切ではありません。
2 前日に,「あしたは,台風が来るので砂場は使えないよ」と伝える。
【○】正しい選択肢です。「砂場は使えない」ことをはっきりとわかりやすく伝えているため、最も適切といえます。
3 前日に,「あしたは,おだんご屋さんは閉店です」と伝える。
【×】誤りです。「おだんご屋さんは閉店です」は間接的な言い方ですので、適切ではありません。
4 その場で,「今日は,砂場は使えないよ」と伝える。
【×】誤りです。前日に予測ができていたことなので、「その場」で伝えるのは適切ではありません。
5 その場で,「今日は,おだんご屋さんは閉店です」と伝える。
【×】誤りです。前日に予測ができていたことなので、「その場」で伝えるのは適切ではありません。
問題33
生理的老化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 環境によって起こる現象である。
2 訓練によって回復できる現象である。
3 個体の生命活動に有利にはたらく現象である。
4 人間固有の現象である。
5 遺伝的にプログラムされた現象である。
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問題33(解答と解説)
老化に関する問題です。
答えは、「5」です。
老化とは、人が成長し、成熟した(=加齢)後、少しずつ体の機能が衰えていく自然な変化のことです。
1 環境によって起こる現象である。
【×】誤りです。環境ではなく、加齢によって起こる現象です。
2 訓練によって回復できる現象である。
【×】誤りです。老化は常に進むものです。回復できる現象ではありません。
3 個体の生命活動に有利にはたらく現象である。
【×】誤りです。生命活動とは、生物が生きていくために必要なさまざまな活動(呼吸、栄養摂取、代謝など)のことを指します。
老化は、これらの生命活動に有利にはたらく現象ではありません。
4 人間固有の現象である。
【×】誤りです。人間だけでなく、すべての生命に起こる現象です。
5 遺伝的にプログラムされた現象である。
【○】正しい選択肢です。老化は遺伝的にプログラムされた現象です。
問題34
エイジズム(ageism)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 高齢を理由にして,偏見をもったり差別したりすることである。
2 高齢になっても生産的な活動を行うことである。
3 高齢になることを嫌悪する心理のことである。
4 加齢に抵抗して,健康的に生きようとすることである。
5 加齢を受容して,活動的に生きようとすることである。
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問題34(解答と解説)
エイジズムに関する問題です。
答えは、「1」です。
エイジズムとは、高齢者に対する偏見や差別のことです。年齢を理由に、仕事や社会活動で不当な扱いを受けることを表す用語です。
例えば、「高齢者だから覚えが悪い」とか「高齢者だからパソコンが使えない」とか…
個人ではなく、「高齢者」という年齢でひとまとめにして扱われることです。
1 高齢を理由にして,偏見をもったり差別したりすることである。
2 高齢になっても生産的な活動を行うことである。
【×】誤りです。「アクティブ・エイジング」に関する説明です。
3 高齢になることを嫌悪する心理のことである。
4 加齢に抵抗して,健康的に生きようとすることである。
【×】誤りです。加齢(エイジング)に抵抗する(アンチ)=「アンチ・エイジング」に関する説明です。
5 加齢を受容して,活動的に生きようとすることである。
【×】誤りです。「サクセスフル・エイジング」に関する説明です。
問題35
Kさん(80歳,男性)は,40歳ごろから職場の健康診査で高血圧と高コレステロール血症(hypercholesterolemia)を指摘されていた。最近,階段を上るときに胸の痛みを感じていたが,しばらく休むと軽快していた。喉の違和感や嚥下痛はない。今朝,朝食後から冷や汗を伴う激しい胸痛が起こり,30分しても軽快しないので,救急車を呼んだ。
Kさんに考えられる状況として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 喘息(bronchial asthma)
2 肺炎(pneumonia)
3 脳梗塞(cerebral infarction)
4 心筋梗塞(myocardial infarction)
5 逆流性食道炎(reflux esophagitis)
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問題35(解答と解説)
持病や症状から想定される病気を選ぶ問題です。
答えは、「4」です。
今回の事例でおさえるポイントは次の部分です。
- 健康診査で高血圧と高コレステロール血症(hypercholesterolemia)を指摘されていた。
- 喉の違和感や嚥下痛はない。
- 冷や汗を伴う激しい胸痛が起こり,30分しても軽快しない。
1 喘息(bronchial asthma)
【×】誤りです。喘息は、気道が炎症を起こし、狭くなる病気です。アレルギーやストレスが原因で、激しい咳、息苦しさ、喘鳴などの症状があります。
2 肺炎(pneumonia)
【×】誤りです。肺炎は、細菌やウイルスに感染し、肺が炎症を起こす病気です。発熱(高熱)、咳、息苦しさ、胸の痛みなどの症状があります。
3 脳梗塞(cerebral infarction)
【×】誤りです。脳梗塞は、脳の血管がつまり、血流が止まる病気です。高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、心房細動などが原因となります。主な症状は、突然の片側の麻痺、言語障害、めまいなどです。
4 心筋梗塞(myocardial infarction)
【○】正しい選択肢です。心筋梗塞は、心臓の血管がつまり、心筋に血液が行かなくなる病気です。原因は高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、動脈硬化などです。主な症状は激しい胸の痛み、息苦しさ、吐き気です。
Kさんの健康状態と新たに出ている症状、どちらも当てはまります。
5 逆流性食道炎(reflux esophagitis)
【×】誤りです。胃酸が食道に逆流して炎症を起こす病気です。原因は食生活や肥満、加齢などです。主な症状は胸やけ、酸っぱい液が喉に上がる感じです。
問題36
次のうち,健康寿命の説明として,適切なものを1つ選びなさい。
1 0歳児の平均余命
2 65歳児の平均余命
3 65歳児の平均余命から介護期間を差し引いたもの
4 介護状態に至らずに死亡する人の平均寿命
5 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題36(解答と解説)
健康寿命に関する問題です。
答えは、「5」です。
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活に制限されることなく生活できる期間。つまり、病気や介護なしで自立して生活できる期間のことを指します。
2019年(令和元年)では、次のグラフのようになっています。
1 0歳児の平均余命
【×】誤りです。「平均寿命」に関する説明です。
2 65歳児の平均余命
3 65歳児の平均余命から介護期間を差し引いたもの
4 介護状態に至らずに死亡する人の平均寿命
5 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
#平均寿命 #健康寿命
問題37
次のうち,前立腺肥大症(prostatic hypertrophy)に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 抗利尿ホルモンが関与している。
2 症状が進むと無尿になる。
3 初期には頻尿が出現する。
4 進行すると透析の対象になる。
5 骨盤底筋訓練で回復が期待できる。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題37(解答と解説)
前立腺肥大症に関する問題です。
答えは、「3」です。
前立腺肥大症は、男性のみにみられ、高齢者に多い病気です。
尿道付近の前立腺組織が大きくなり、尿道を圧迫します。
頻尿、残尿感、放尿力低下などの症状が出ます。
進行すると、尿が全くでなくなることもあります。これを、尿閉といいます。
1 抗利尿ホルモンが関与している。
【×】誤りです。抗利尿ホルモンとは、尿が出るのを邪魔をするホルモンのことです。直接関係はありません。
2 症状が進むと無尿になる。
【×】誤りです。無尿は尿が作られなくなることです。前立腺肥大症は、尿は作られるけど出なくなる「尿閉」になります。
3 初期には頻尿が出現する。
【○】正しい選択肢です。初期は、通常より何度もトイレに行く頻尿の症状が出ます。
4 進行すると透析の対象になる。
【×】誤りです。透析は、腎臓が十分に機能しないとき(腎不全など)に行う治療法です。
5 骨盤底筋訓練で回復が期待できる。
【×】誤りです。骨盤底筋とは、骨盤を支えている筋肉で、この筋肉を鍛えると腹圧性尿失禁などに効果があります。
問題38
次のうち,高齢期に多い筋骨格系の疾患に関する記述として,適切なものを1つ選びなさい。
1 骨粗鬆症(osteoporosis)は男性に多い。
2 変形性膝関節症(knee osteoarthritis)ではX脚に変形する。
3 関節リウマチ(rheumatoid arthritis)は軟骨の老化によって起こる。
4 腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis)では下肢のしびれがみられる。
5 サルコペニア(sarcopenia)は骨量の低下が特徴である。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題38(解答と解説)
高齢期に多い筋骨格系の疾患に関する問題です。
答えは、「4」です。
1 骨粗鬆症(osteoporosis)は男性に多い。
【×】誤りです。
骨粗鬆症は、骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。特に、女性に多く見られます。原因は、カルシウムの欠乏、女性ホルモンの低下、運動・栄養不足などです。
予防には、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの摂取、運動による骨形成促進、日光浴によるビタミンDの産生促進などが有効です。
2 変形性膝関節症(knee osteoarthritis)ではX脚に変形する。
【×】誤りです。変形性膝関節症は、体重や加齢などの影響から関節の軟骨がすり減ることで関節が変形し、膝に強い痛みが出る病気です。O脚(内反型)の変形を伴うことが多いです。
3 関節リウマチ(rheumatoid arthritis)は軟骨の老化によって起こる。
【×】誤りです。関節リウマチは、自己免疫にトラブルが生じ、関節が炎症を起こし、軟骨や骨が壊されてしまう病気です。はっきりとした原因はわかっていません。
4 腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stenosis)では下肢のしびれがみられる。
【○】正しい選択肢です。腰部脊柱管狭窄症は、腰の脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される病気です。主な原因は加齢で、症状は下肢のしびれや痛み、間欠性跛行です 。
5 サルコペニア(sarcopenia)は骨量の低下が特徴である。
【×】誤りです。サルコペニアは、年齢とともに筋肉量と筋肉などが少しずつ減少していく状態をいいます。主な原因は、運動不足、栄養不良で、筋力低下や歩行困難などの症状が出ます。
#脊柱管狭窄症 #関節リウマチ #骨粗鬆症 #変形性膝関節症