コミュニケーション技術
問題74
Cさん(85歳,女性,要介護3 )は,介護老人保健施設に入所しており,軽度の難聴がある。数日前から,職員は感染症対策として日常的にマスクを着用して勤務することになった。
ある日,D介護福祉職がCさんの居室を訪問すると,「孫が絵を描いて送ってくれたの」と笑いながら絵を見せてくれた。D介護福祉職はCさんの言動に共感的理解を示すために,意図的に非言語コミュニケーションを用いて対応した。
このときのD介護福祉職のCさんへの対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「よかったですね」と紙に書いて渡した。
2 目元を意識した笑顔を作り,大きくうなずいた。
3 「お孫さんの絵が届いて,うれしかったですね」と耳元で話した。
4 「私もうれしいです」と,ゆっくり話した。
5 「えがとてもじょうずです」と五十音表を用いて伝えた。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題74(解答と解説)
難聴者とのコミュニケーションのとり方に関する問題です。
答えは、「2」です。
非言語コミュニケーションとは、言葉を使わずに気持ちや考えを伝える方法です。
表情、ジェスチャー、姿勢、視線、声のトーンなどのことです。
難聴者とのコミュニケーションでは、積極的に取り入れたい技法です。
1 「よかったですね」と紙に書いて渡した。
【×】誤りです。文字に書いた言葉は、言語コミュニケーションです。
2 目元を意識した笑顔を作り,大きくうなずいた。
3 「お孫さんの絵が届いて,うれしかったですね」と耳元で話した。
【×】誤りです。言語コミュニケーションです。
4 「私もうれしいです」と,ゆっくり話した。
【×】誤りです。言語コミュニケーションです。
5 「えがとてもじょうずです」と五十音表を用いて伝えた。
【×】誤りです。五十音表を用いた会話も言語コミュニケーションです。
#言語コミュニケーション #非言語コミュニケーション
問題75
利用者の家族との信頼関係の構築を目的としたコミュニケーションとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 家族に介護技術を教える。
2 家族に介護をしている当事者の会に参加することを提案する。
3 家族から介護の体験を共感的に聴く。
4 家族に介護を続ける強い気持ちがあるかを質問する。
5 家族に介護保険が使える範囲を説明する。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題75(解答と解説)
家族との信頼関係を構築するためのコミュニケーションに関する問題です。
答えは、「3」です。
ポイントは、「信頼関係」構築という部分です。
信頼関係の基本は、相手に十分に関心を寄せて相手の声に耳を澄ます(傾聴)と、相手を評価せずにありのままに受け入れる(受容)、相手の気持ちをその通りだと共に感じる(共感)の姿勢です。
この基本を意識して選択肢を選びましょう。
1 家族に介護技術を教える。
【×】誤りです。家族への介護技術の指導も介護福祉職の役割の1つです。しかし、信頼関係を構築するコミュニケーションではありません。
2 家族に介護をしている当事者の会に参加することを提案する。
【×】誤りです。家族が必要な提案をすることも介護福祉職の役割の1つです。しかし、信頼関係を構築するコミュニケーションではありません。
3 家族から介護の体験を共感的に聴く。
4 家族に介護を続ける強い気持ちがあるかを質問する。
【×】誤りです。介護を続ける意思を質問するのではなく、今後どうしたいのか、何が心配なのかも含めて家族の気持ちを聞き、それを受入れ、共感することが必要です。
5 家族に介護保険が使える範囲を説明する。
【×】誤りです。家族が必要な情報を提供することも介護福祉職の役割の1つです。しかし、信頼関係を構築するコミュニケーションではありません。
問題76
Eさん(70歳,女性)は,脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症で言語に障害がある。発語はできるが,話したいことをうまく言葉に言い表せない。聴覚機能に問題はなく,日常会話で使用する単語はだいたい理解できるが,単語がつながる文章になるとうまく理解できない。ある日,Eさんに介護福祉職が,「お風呂は,今日ではなくあしたですよ」と伝えると,Eさんはしばらく黙って考え,理解できない様子だった。
このとき,Eさんへの介護福祉職の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「何がわからないのか教えてください」と質問する。
2 「お風呂,あした」と短い言葉で伝える。
3 「今日,お風呂に入りたいのですね」と確かめる。
4 「あしたがお風呂の日で,今日は違いますよ」と言い換える。
5 「お・ふ・ろ・は・あ・し・た」と1音ずつ言葉を区切って伝える。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題76(解答と解説)
言語障害がある人とのコミュニケーション技法に関する問題です。
答えは、「2」です。
事例の中から、答えに必要な情報を集めましょう。
今回の事例でおさえるポイントは次のとおりです。
- 発語はできるが,話したいことをうまく言葉に言い表せない。
- 聴覚機能に問題はない。
- 単語はだいたい理解できるが,単語がつながる文章になるとうまく理解できない。
1 「何がわからないのか教えてください」と質問する。
【×】誤りです。「文章になるとうまく理解できない」とあるため、適切ではありません。
2 「お風呂,あした」と短い言葉で伝える。
【○】正しい選択肢です。「単語はだいたい理解できる」とあるため、最も適切といえます。
3 「今日,お風呂に入りたいのですね」と確かめる。
【×】誤りです。「文章になるとうまく理解できない」とあるため、適切ではありません。
4 「あしたがお風呂の日で,今日は違いますよ」と言い換える。
【×】誤りです。「文章になるとうまく理解できない」とあるため、適切ではありません。
5 「お・ふ・ろ・は・あ・し・た」と1音ずつ言葉を区切って伝える。
【×】誤りです。「聴覚機能に問題はない」ため、1音ずつ言葉を区切って話す必要はありません。
#コミュニケーション技法 #言語障害
問題77
Fさん(70歳,女性)は,最近,抑うつ状態(depressive state)にあり,ベッドに寝ていることが多く,「もう死んでしまいたい」とつぶやいていた。
Fさんの発言に対する,介護福祉職の言葉かけとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「落ちこんだらだめですよ」
2 「とてもつらいのですね」
3 「どうしてそんなに寝てばかりいるのですか」
4 「食堂へおしゃべりに行きましょう」
5 「元気を出して,頑張ってください」
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題77(解答と解説)
抑うつ状態の人とのコミュニケーション技法に関する問題です。
答えは、「2」です。
抑うつ状態とは、気分が落ち込み、やる気が出ない状態です。興味や喜びが減り、疲れやすくなります。睡眠や食欲の変化、不安や集中力の低下も見られることがあります。
抑うつ状態の人の対応で気をつけること
- 優しく声をかけ、相手を否定せず、焦らずに話を聞く。
- 無理に元気づけたりせず、気持ちを尊重する。
- 規則正しい生活を支援する。
- 本人が負担となる決断などをさせない。
- 小さな変化を見逃さず、専門家への相談を促したり、治療のサポートを行う。
1 「落ちこんだらだめですよ」
【×】誤りです。「だめ」という否定する声かけは適切ではありません。
2 「とてもつらいのですね」
【○】正しい選択肢です。相手の気持ちを尊重している声かけです。
3 「どうしてそんなに寝てばかりいるのですか」
【×】誤りです。「どうして」という質問は相手を責める声かけですので、適切ではありません。
4 「食堂へおしゃべりに行きましょう」
【×】誤りです。相手を尊重できていない声かけです。相手のペースで対応するのが大切です。
5 「元気を出して,頑張ってください」
【×】誤りです。励ましの声かけは、適切ではありません。
問題78
Gさん(70歳,女性,要介護1)は,有料老人ホームに入居していて,網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)による夜盲がある。ある日の夕方,Gさんがうす暗い廊下を歩いているのをH介護福祉職が発見し,「Hです。大丈夫ですか」と声をかけた。Gさんは,「びっくりした。見えにくくて,わからなかった…」と暗い表情で返事をした。
このときのGさんに対するH介護福祉職の受容的な対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「驚かせてしまいましたね。一緒に歩きましょうか」
2 「明るいところを歩きましょう。電気をつけたほうがいいですよ」
3 「見えにくくなってきたのですね。一緒に点字の練習を始めましょう」
4 「白杖があるかを確認しておきます。白杖を使うようにしましょう」
5 「暗い顔をしないでください。頑張りましょう」
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題78(解答と解説)
個別援助技術に関する問題です。
答えは、「1」です。
「受容的な対応」というのは、対人援助で基本となる「バイスティックの7原則」の1つです。
バイスティックの7原則は、支援者が相手の感情や状況を尊重し、自立を促しながら信頼関係を築くために重要な原則です。
バイスティックの7原則
- 個別化
- 意図的な感情表出
- 統制された情緒的関与
- 受容
- 非審判的態度
- 自己決定
- 秘密保持
「受容」とは、その人自身をあるがままに受け止めるという考え方です。
利用者の個性や考えを否定せず、「なぜそう考えるのか」「なぜその行動を取るのか」を理解し、適切に支援することが重要です。
人は育った環境や経験が違うため、意見も異なります。その違いを尊重し受け入れることで、スムーズな支援関係を築くことができます。
1 「驚かせてしまいましたね。一緒に歩きましょうか」
【○】正しい選択肢です。受容的な対応です。
2 「明るいところを歩きましょう。電気をつけたほうがいいですよ」
【×】誤りです。受容的な対応ではありません。
3 「見えにくくなってきたのですね。一緒に点字の練習を始めましょう」
【×】誤りです。受容的な対応ではありません。
4 「白杖があるかを確認しておきます。白杖を使うようにしましょう」
【×】誤りです。受容的な対応ではありません。
5 「暗い顔をしないでください。頑張りましょう」
【×】誤りです。受容的な対応ではありません。
#網膜色素変性症 #夜盲 #バイスティックの7原則
問題79
事例検討の目的に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 家族に介護計画を説明し,同意を得る。
2 上司に利用者への対応の結果を報告し,了解を得る。
3 介護計画の検討をとおして,チームの交流を深める。
4 チームで事例の課題を共有し,解決策を見いだす。
5 各職種の日頃の悩みを共有する。
解答(かいとう)と解説(かいせつ)を確認(かくにん)する
問題79(解答と解説)
事例検討の目的に関する問題です。
答えは、「4」です。
事例検討とは、日頃の記録などから利用者のケアに関する具体的な事例を多職種間で共有し、問題点や改善策をといった支援の方向性を話し合う場です。
1 家族に介護計画を説明し,同意を得る。
【×】誤りです。介護計画を説明し、同意を得ることが目的ではありません。
2 上司に利用者への対応の結果を報告し,了解を得る。
【×】誤りです。上司に了解を得ることが目的ではありません。
3 介護計画の検討をとおして,チームの交流を深める。
【×】誤りです。チームの交流を深めることが目的ではありません。
4 チームで事例の課題を共有し,解決策を見いだす。
5 各職種の日頃の悩みを共有する。
【×】誤りです。日頃の悩みを共有することが目的ではありません。