ICF(国際生活機能分類)をわかりやすく学ぼう
ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)は、介護福祉士国家試験でよく出る大切なテーマです。
ICFでは、病気や障害だけを見るのではありません。
その人の「生活機能」や、周りの「環境」なども含めて、その人の生活全体を考えます。
介護福祉士国家試験では、ICFの言葉をそのまま覚えるだけではなく、事例を読んで、
- ICFの「どの項目」にあたるのか
- 何が「活動」なのか
- 何が「参加」なのか
- 何が「環境因子」なのか
- 何が「参加制約」の原因になっているのか
などを考える問題が出ています。
ICFの基本的な言葉と、その関係を一緒に確認していきましょう。
ICFでは「その人全体」を考える
ICFでは、その人のできないことだけを見るのではありません。
たとえば、歩くことが難しい人がいたとします。
「足が動きにくい」という体の状態だけでなく、
- 車いすを使えば移動できる
- 家族が外出を手伝ってくれる
- 家の周りに坂道や段差がある
- 地域の人と交流したい
など、その人の生活や周りの環境も一緒に考えます。
つまり、ICFでは「病気や障害があるからできない」と考えるだけではなく、その人と環境との関係も含めて考えることが大切です。
ICFの全体像を確認しよう
ICFでは、次のような項目を使って、その人の生活を考えます。
ICFでは、 健康状態、 生活機能、 背景因子 が、おたがいに影響しあうと 考えます。
病気・けが・ 認知症など
その人の 健康の 状態です。
からだやこころの働き、
からだのつくりのことです。
例: 筋力、 記憶、 視力、 聴力
本人が 行う 動作や 行為のことです。
例: 歩く、 食事をする、 着替える
生活・ 人生場面への かかわりのことです。
例: 仕事、 地域活動、 認知症カフェに 通う
本人のまわりにある 人・もの・ 社会・ 制度などです。
例: 家族、 介護職、 福祉用具、 段差、 坂道
その人自身の 特徴や 生活背景です。
例: 年齢、 性格、 生活歴、 価値観
たとえば、段差があると 外出しにくくなり、 地域の活動への 参加がむずかしくなることがあります。
生活機能とは?
ICFでは、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」をまとめて、生活機能といいます。
「生活機能」は、その人が生きて生活していくための、さまざまな働きや行動、社会との関わりを表す言葉です。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
健康状態
健康状態とは、 その人の 病気やけがなど、 健康についての状態のことです。
ICFでは、健康状態として、 病気やけがだけではなく、 人の健康に関係する さまざまな状態を考えます。
健康状態には、 疾患だけでなく、 高齢、妊娠、 ストレスなども含まれます。
「疾患」とは、 病気のことです。
健康状態は、 「その人の健康は、どんな状態か」 を見るところです。
病名が書かれている場合は、 まず健康状態を考えると 整理しやすくなります。
病気・けが
- アルツハイマー型認知症
- パーキンソン病
- 糖尿病
- 脳梗塞
- 骨折
そのほかの健康に関係する状態
- 高齢
- 妊娠
- ストレス
過去の試験では、 「アルツハイマー型認知症」 が健康状態として出題されています。
アルツハイマー型認知症は 病気の名前なので、 健康状態にあたります。
試験では、 病気の名前と、 その病気によって起こる 体や心の働きを 区別することが大切です。
健康状態
病気やけがなどの状態
例:
アルツハイマー型認知症
心身機能
体や心の「働き」
例:
記憶する力が低下する、
見当識障害
たとえば、 「アルツハイマー型認知症」は 健康状態、 「見当識障害」は 心身機能 と考えます。
健康状態
= その人の「健康の状態」
病気・けがだけでなく、
高齢・妊娠・
ストレスなども含まれる
病名
= 健康状態
体や心の働き
= 心身機能
① 心身機能・身体構造
心身機能・身体構造は、 体や心の働きと、 体のつくりについて考える項目です。
心身機能
体や心の 働きのことです。
身体構造
臓器や手足など、 体をつくっている部分 のことです。
心身機能は、 「身体系の生理的機能 (心理的機能を含む)」です。
身体構造は、 「器官、肢体とその構成部分などの 解剖学的部分」です。
心身機能 = 「働き」
- 手や足を動かす
- 見る
- 聞く
- 覚える
- 考える
- 心臓や肺などが働く
身体構造 = 「体の部分」
- 脳
- 目・耳
- 心臓・肺
- 手・足
- 骨
- 筋肉
体や心の 働きに問題があることです。
体の部分や つくりに問題があることです。
- 聴力の低下
- バランスを崩す
- 見当識障害
たとえば、「聴力の低下」は、 耳そのものではなく、 「聞く働き」 に関係するため、 心身機能として考えます。
心身機能
= 体や心の「働き」
身体構造
= 体の「つくり・部分」
② 活動
活動とは、 本人が行う 動作や行為のことです。
ICFでは、活動を 「課題や行為の 個人による遂行」 と考えます。
「遂行」とは、 実際にその行為をすることです。
活動は、 「その人がすること」 と考えるとわかりやすいです。
- 食事をする
- 歩く
- 着替える
- 話す
- 買物をする
- 料理をする
- 服薬をする
- 読書をする
実行状況
(している活動)
今の生活で、 実際にしていることです。
能力
(できる活動)
本人が できる活動や能力です。
する活動
本人が今後したいことや、 目標にする活動です。
活動をするときに 難しさがあることを、 「活動制限」 といいます。
たとえば、 「一人で歩くことが難しい」 という場合です。
- 読書をする
- 美術館に行く
- 服薬をする
- 体操をする
試験では、 事例の中から 「どの行為が活動にあたるか」 を考えることが大切です。
活動
= 「課題や行為の
個人による遂行」
やさしく言うと「その人がすること」
活動制限
= 活動をするときの「難しさ」
③ 参加
参加とは、 生活や社会の中で、 人や地域などと 関わることです。
ICFでは、参加を 「生活・人生場面へのかかわり」 と考えます。
「生活・人生場面へのかかわり」 という言葉を覚えておきましょう。
「人生場面」とは、 家庭、仕事、 地域、人との交流など、 その人が生活するさまざまな場面です。
参加は、 「生活や社会の中でかかわること」 と考えるとわかりやすいです。
- 仕事をする
- 地域の行事に参加する
- 町内会で役割を持つ
- 友人と交流する
- 認知症カフェに通う
- レクリエーションで役割を持つ
生活や人生場面に 関わるときに難しさがあることを、 「参加制約」 といいます。
たとえば、 「地域の人と交流したいが、 外出が難しく、 交流できていない」 という場合です。
- 認知症カフェに通う
- レクリエーションで歌の伴奏をする
- 地域住民との交流
参加では、 その人が生活や社会の中で、 どのように関わっているか に注目します。
活動
課題や行為の 個人による遂行
やさしく言うと、 「その人がすること」です。
例:体操をする
参加
生活・人生場面へのかかわり
やさしく言うと、 「生活や社会の中でかかわること」です。
例:認知症カフェに通う
実際の生活では、 活動と参加を はっきり分けられないこともあります。
参加
= 「生活・人生場面へのかかわり」
やさしく言うと
「生活や社会の中でかかわること」
参加制約
= 参加するときの「難しさ」
④ 環境因子
環境因子とは、 本人のまわりにある 人、もの、建物、 制度などの環境のことです。
ICFでは、環境因子を、 物的な環境や 社会的環境などを 構成する因子 と考えます。
「物的な環境や 社会的環境などを 構成する因子」 という表現を覚えておきましょう。
「因子」とは、 人の生活や 行動に影響するもの のことです。
環境因子は、 「本人のまわりにあるもの」 と考えるとわかりやすいです。
人だけでなく、 建物や道路、 福祉用具、 介護サービスなども 環境因子になります。
物的な環境
本人のまわりにある 「もの」や「場所」です。
- 段差
- 坂道
- スロープ
- 車いす
- 福祉用具
- GPS装置
人的な環境
本人のまわりにいる 「人」です。
- 家族
- 娘・息子
- 友人
- 介護福祉職
- 近所の人
- 民生委員
社会的な環境
社会の制度や サービスなどです。
- 介護保険制度
- 介護サービス
- 地域の支援
- 福祉制度
環境因子は、 本人の生活を 助けることもあれば、 難しくすることもあります。
促進因子
本人の活動や 参加を 助ける環境 です。
例:
スロープがある、家族が支援する、
福祉用具を使う
阻害因子
本人の活動や 参加を 難しくする環境 です。
例:
大きな段差がある、
坂道が多い、
必要な支援がない
過去の試験では、 環境因子に関係するものとして、 次のような内容が出ています。
- 娘が近隣に住み、 毎日訪問している
- 自宅周辺の 坂道や段差
家族も、 道路や段差も、 本人のまわりにあるものなので、 環境因子として考えます。
環境因子の問題では、 ただ環境因子を見つけるだけではなく、 「参加制約の原因になっている環境因子」 を考える問題もあります。
たとえば、
↓
自宅周辺に 坂道や段差が多い
↓
外出が難しい
↓
地域住民との交流ができない
この場合、 「自宅周辺の坂道や段差」 が、参加制約の原因になっている 環境因子です。
介護では、 本人だけを変えようとするのではなく、 周りの環境を変える ことも大切です。
過去の試験では、 「参加への影響を意図して、 環境因子に働きかける」 という考え方が問われています。
たとえば、 本人がいつもの店に行き続けられるように、 店の人に事情を説明することも、 環境因子への働きかけです。
環境因子
= 「本人のまわりにあるもの」
家族・介護職・
福祉用具・段差・
坂道・制度なども
環境因子
環境因子は、
活動や参加を
助けることも、難しくすることもある
⑤ 個人因子
個人因子とは、 その人自身の 特徴や、 これまでの人生・生活の 背景のことです。
ICFでは、個人因子を、 「個人の 人生や生活の 特別な背景」 と考えます。
「個人の 人生や生活の 特別な背景」 という表現を覚えておきましょう。
「背景」とは、 その人が これまでどのように生活してきたか、 どのような経験や 考えを持っているか、 ということです。
個人因子は、 「その人自身が持っている 特徴」 と考えるとわかりやすいです。
病気や障害ではなく、 その人の 年齢、 性格、 生活歴、 考え方などに 注目します。
本人の特徴
- 年齢
- 性格
- 考え方
- 価値観
- 生活習慣
人生や生活の背景
- 生活歴
- 職歴
- 仕事の経験
- 趣味
- これまでの生活のしかた
過去の試験では、 個人因子として、 次のような内容が 出ています。
- 「小学校の 教員をしていた」
- 「医者嫌いである」
「小学校の 教員をしていた」は、 その人の 職歴や 人生の背景なので、 個人因子です。
「医者嫌いである」は、 本人の 考え方や 気持ちに関係するため、 個人因子として 考えます。
この2つは、どちらも 生活機能に 影響する 背景因子です。
環境因子
本人の「まわり」にあるもの
例:
家族、
介護職、
福祉用具、
段差、
制度
個人因子
本人自身の 特徴や背景
例:
年齢、
性格、
生活歴、
職歴、
価値観
個人因子
= 「その人自身の
特徴や
人生・生活の
背景」
年齢・
性格・
生活歴・
職歴・
価値観など
環境因子
= 本人の「まわり」
個人因子
= 「本人自身」
ICFでは「相互作用」が大切
ICFで特に大切なのは、それぞれが相互作用しているという考え方です。
「相互作用」とは、お互いに影響し合うことです。
たとえば、車いすを使っている人がいるとします。
家の前に大きな段差があると、
環境因子「大きな段差がある」
↓
活動「外出することが難しくなる」
↓
参加「地域の人との交流が難しくなる」
というように、環境が活動や参加に影響することがあります。
反対に、スロープをつけるなど、環境因子を変えることで、外出しやすくなり、地域の人との交流もしやすくなることがあります。
環境因子に働きかける支援
介護では、本人だけを変えようとするのではなく、環境因子に働きかけることも大切です。
第36回試験では、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)のCさんについて、「八百屋に事情を話して事前にお金を渡しておく」という支援が出題されました。
Cさんが今までどおり八百屋へ行けるようにするため、
八百屋の人に事情を説明する
= 周りの環境を変える
= 環境因子に働きかける
と考えます。
その結果、「八百屋へ行く」という参加を続けられるようにすることを目指しています。
つまり、この事例では、参加への影響を意図して、環境因子に働きかけるという考え方になります。
ICFでは、このように本人の病気や心身機能だけではなく、周りの環境を変えることで生活を支えるという視点も大切です。
ICFでは「できないこと」だけを見ない
ICFでは、「できないこと」だけを探すのではありません。
たとえば、「一人では遠くまで歩けない」という情報だけを見るのではなく、
- 車いすを使えば移動できる
- 家族の支援がある
- 本人は地域の人と交流したい
- 環境を整えれば外出できる
という情報も一緒に考えます。
その人ができること、したいこと、周りの環境を含めて、その人全体を見ることが大切です。
ICFができる前は、 ICIDH(国際障害分類) という考え方が 使われていました。
ICIDHでは、障害を 「できなくなったこと」や 「不利になったこと」 というマイナスの面を 中心に考えていました。
- 運動麻痺 → 機能障害
- 日常生活動作(ADL)が 難しい → 能力障害
- 職場復帰が 難しい → 社会的不利
ICFでは、 「できないこと」だけを見ません。
「できること」や 周りの環境も 含めて、 その人の 生活全体を 考えます。
本人のまわりにあるもの
本人自身の 特徴や 背景
| ICIDH | ICF | |
|---|---|---|
| 考え方 | 障害の マイナスの面を 中心に 考える | 生活機能と 障害の 両方を 考える |
| 主な言葉 | 機能障害 → 能力障害 → 社会的不利 | 心身機能・ 身体構造、 活動、 参加 |
| 見るポイント | 障害によって、 何ができなくなったかを 見る | できること、できないこと、 周りの 環境などを 一緒に見る |
| 関係 | 機能障害から 社会的不利へと 進む 流れで考える | それぞれが 相互作用 していると考える |
ICIDH
= 「何ができなくなったか」を
中心に
考える
ICF
= 「できること」や
「周りの環境」も
含めて、
その人の
生活全体を
考える
ICFの問題では、 事例を読んで、 「これはどの項目にあたるか」を 整理することが大切です。
例:
- アルツハイマー型認知症
- パーキンソン病
- 骨折
心身機能の例:
- 手足を動かす
- 見る・聞く
- 覚える・考える
身体構造の例:
- 脳
- 目・耳
- 手・足
例:
- 食べる
- 歩く
- 着替える
- 買物をする
例:
- 仕事
- 地域活動
- 交流
- 役割を持つ
例:
- 家族
- 介護職
- 福祉用具
- 建物・道路
- 制度
例:
- 年齢
- 性格
- 生活歴
- 職歴
- 価値観
問題で「何について聞かれているか」を 確認して考えましょう。
ICFの問題でよく使われる 言葉と、やさしい意味を 確認しましょう。
| 試験で使われる言葉 | やさしい意味 |
|---|---|
| 生活機能 | 心身機能・身体構造、 活動、 参加をまとめたもの |
| 心身機能 | 体や心の働き |
| 身体構造 | 体をつくっている部分 |
| 活動 | 課題や行為を 本人が行うこと |
| 活動制限 | 活動をするときの難しさ |
| 参加 | 生活・人生場面へのかかわり |
| 参加制約 | 生活・人生場面に かかわるときの難しさ |
| 背景因子 | 環境因子と 個人因子 |
| 環境因子 | 本人のまわりにある 人・物・社会・ 制度など |
| 個人因子 | 本人自身の 特徴や、 人生・生活の 背景 |
| 相互作用 | おたがいに影響し合うこと |
| 促進因子 | 活動や参加を しやすくする環境 |
| 阻害因子 | 活動や参加を 難しくする環境 |
心身機能・身体構造、 活動、 参加をまとめたもの
体や心の働き
体をつくっている部分
課題や行為を 本人が行うこと
活動をするときの難しさ
生活・人生場面へのかかわり
生活・人生場面に かかわるときの難しさ
環境因子と 個人因子
本人のまわりにある 人・物・社会・ 制度など
本人自身の 特徴や、 人生・生活の 背景
おたがいに影響し合うこと
活動や参加を しやすくする環境
活動や参加を 難しくする環境
ICFで特に大切なポイントを、 最後に確認しましょう。
- 生活機能は、 心身機能・身体構造、 活動、 参加から考える
- 背景因子には、 環境因子と 個人因子がある
- 病気やけがは、 健康状態として考える
- 活動が難しい状態を、 活動制限という
- 参加が難しい状態を、 参加制約という
- ICFのそれぞれは、 相互作用 (おたがいに影響し合うこと)している
- 本人だけでなく、 環境因子に働きかける ことも大切
問題文を読んだら、 次の3つを確認してみましょう。
これはどの項目?
健康状態、 活動、 参加、 環境因子など、 どこにあたるかを考えます。
何が原因になっている?
活動や参加を 難しくしているものが何かを 考えます。
何に働きかけている?
本人への支援なのか、 環境因子への働きかけなのかを 確認します。